そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「……っ!」




はっと息を吸い込んで、目を覚ました。


天井が見える。

暗い部屋。
神楽の家の、見慣れた天井。



「……夢。」



心臓がうるさくて、呼吸が浅い。

喉の奥が詰まったみたいで、うまく息が吸えなかった。


頬には冷たい感触があって、
指で触れて、ようやく気づく。

……泣いてる。


「………………最近、夢は見なくなったのに……」


ぽつりと零した声は、誰にも届かない。


布団に戻ろうとしても、目を閉じるのが怖くて。

身体の奥がざわついて、じっとしていられない。


静かに部屋を出て庭へ向かうと、夜風が、火照った頬を冷やしてくれた。



ポケットに手を入れると、指先が金属に触れる。


……撃てないくせに、護身用に持ち歩いている銃。


取り出して、庭の端にある訓練用の的に向けてみる。

視界が揺れて、照準が定まらない。


「……っ」


意識すればするほど、震えは大きくなる。
深呼吸しても、止まらない。


もう大丈夫だと思ってた。
過去は過去だって、受け入れたつもりでいた。

でも、こうして突然、思い出す。

……多分、今日の出来事で、
しまい込んだはずの傷が、また抉られた。