そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~










────夜なのに、空が赤くて。

遠くで、何かが燃えている音がする。


足元が、冷たい。

じっとりと、靴底にまとわりつく嫌な感触。


……血。


「……おとうさん」


返事はない。

いつもと同じ。そこに“いる”のに、もう動かない。


「……おかあさん……?」


声を出した瞬間、景色がぐちゃりと歪む。

揺らしても、名前を呼んでも、何も返ってこない。
その場で、世界だけが止まっているみたい。

次の瞬間には、知らない顔、知らない声、知らない匂いに囲まれていて。


「……………やだ、おいてかないで…」


喉の奥から絞り出すように呟いた、その瞬間。

背後で何かが動く気配に、
振り返るより早く、身体が勝手に反応した。


「居たぞ!……って、子供?」

「そいつは“桜庭組”の娘だ!!殺せ!」


視界に映る“敵”を、ひとり、またひとりと無心で倒していく。

感情はない。

怒りも、悲しみも、恐怖も。

ただ、終わらせなきゃいけないという感覚だけが、胸の奥にあった。


気づけば、手の中に、冷たい重み。

引き金に指をかける。

向こう側にいる“誰か”の顔は、ぼやけて見えない。


それでも、撃たなきゃいけないと思った。

これで全部、終わるはずだから。




指先に、力を込めて——