そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




「蓮がどう生きるかは、蓮が決めることでしょ」


長い沈黙のあと。


蓮の腕が、ゆっくりと、私の背中に回された。


ぎゅ、と。

さっきよりも、ずっと強く。



「……お前、ほんとずるい」



耳元で、かすれた声がした。


それは、神楽組の若頭じゃなくて。

ただの少年の、蓮の声。



「そうやって……簡単に踏み込んできて」



蓮の腕の力は、強くも弱くもならないまま。

ただ、逃がさないように私を抱いていた。


心臓の音が、近い。

さっきまでの怒りの残響が、まだ体温に残っているみたいで。


蓮の視線が、一瞬だけ彷徨って、それから私を捉える。

さっきまで光のなかった瞳に、色が戻っていた。


…いつもの蓮だ。


蓮は小さく息を吐いて、私を離さないまま、少しだけ体重を預けてきた。

肩に、顎が乗る。