そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~

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繁華街に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。

昼間とはまるで別の顔をした街。

ネオンの光が路地に溜まり、甘ったるい香水とアルコールの匂いが混ざり合う。


……こういう場所は、やっぱり慣れないなぁ。

そんなとき。


「ねぇお姉さん、かわいいね。ちょっと寄ってかない?」


進行方向から男が現れて、道を塞がれた。

無視しようにも頑なに前をどかないので、仕方なく足を止める。

どいてと言おうとした次の瞬間、蓮に肩をぐっと引き寄せられた。


「……おい。俺の女に、何か?」


……えっ、

庇うための、冗談。
そう分かっているのに、心臓が変な音を立てる。

変に意識してしまって言葉が出ない私をよそに、蓮の視線を受けた男の顔色が、みるみるうちに変わっていくのが見えた。


「っ……! か、神楽……蓮さん!?」


慌てて頭を下げるその様子に、周囲の空気まで一瞬で張りつめた。


「も、申し訳ありません! いつもお世話になってます!」


…あ、そっか

ここ一帯の店は、神楽組の管轄。
この街にいる人間なら知らないわけがない。

蓮は男を見下ろしたまま、感情の読めない目で言った。


「今回は許す。次やったら、許さねぇからな」


蓮がそう睨みつければ、その男は「はいっ!!!」とでかい声で返事をして逃げるように去っていった。

何でもない顔をして歩き出す蓮の横で、私は気持ちを切り替えるように息を吐いた。