「蓮!どこ行くの!?」
小走りで追いついて腕を掴むと、蓮は一瞬だけ振り返って視線を逸らした。
「…これは組の問題だから。彩葉は来なくていい」
来なくていい。
まるで、出会ったばかりの頃の蓮みたい。
「常時護衛なんだから行くに決まってるでしょ。危険な場所なら尚更」
即答すると、蓮は少しだけ眉を寄せた。
「組のことは関係ないだろ──」
「関係ある!」
……正直に言えば、組の事情なんて詳しくは知らない。
これからどこに行くのかも、何が起きているのかも。
それでも。
蓮を一人で行かせる選択肢は私の中にはなかった。
しばらく無言で見つめ合ってから、蓮は小さく息を吐いた。
「……分かったよ」
諦めたような、それでいてどこか苦しそうな声。
「外で絢斗が待ってる。行くぞ」
建物を出ると、夜の空気が肌に触れた。
昼間の熱気が嘘みたいにひんやりしている。
駐車場の端に、見慣れた黒い車。
運転席の窓が下がって、絢斗さんが軽く手を上げた。
「お疲れ。2人とも乗って」
私と蓮は並んで後部座席に乗り込む。
走り出した車内で、絢斗さんがバックミラー越しにこちらを見た。

