そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~





「彩葉は……あ、いや、なんでもない」

「……?」


喉まで出かかった言葉を、慌てて飲み込んだ。


…彩葉が Aegis(イージス)に来た理由を、俺は知ってるから。


なんでこの時の彩葉がこんなにも無表情で、
全てを諦めたみたいな目をしていたのかも。



でも、そのことを彩葉自身は知らない。

……いや、
知らないままでいさせなきゃいけなかった。



それでも知れば知るほど気づいてしまう。

彩葉は強いけど、心が強いわけじゃない。



誰かに頼ることも、甘えることも、そもそも“選択肢”として持っていなかった。


けど。俺にだけは、少しずつ、少しずつ。

言葉を返してくれるようになって。



「律、おはよ。今日の任務もまた一緒だね!」



初めは無表情だった彩葉が、笑うようになって。



「彩葉、無茶しすぎ。そんなんじゃいつか死んじゃうよ」

「 んー、そうかもね」

「分かってるならなんで」

「……もう誰も、失いたくないから。」



その声は静かで。

でも、確かに震えていた。



俺にだけ時折見せる、そんな表情さえ愛おしくて。



気づけば——

特別な感情を持つようになっていた。