そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~






──彩葉と出会ったのは、俺が12歳で…彩葉が10歳の時。






当時、彩葉は Aegis (イージス)に新人として入ってきた。
「戦闘マシンみたいな子がいる」「感情がないらしい」
そんな噂ばかりが先に耳に入ってきて。


実際に会った彩葉は、噂通りだった。

驚くほど無表情で。
声も、目も、感情の起伏がほとんど見えない。

感情がない、というより…
感情を“外に出す方法”を知らない、そんな感じ。


……正直、最初は興味本位だった。

どんな奴なのか、知りたかっただけ。


「強いね」って言ったら、彩葉は真顔のまま、

「……別に。そうしないといけなかっただけ」

驚くほど淡々と答えた。


この子は強い。
確かに強かった。


でも——
この子は、“強くあろうとしている”だけなんじゃないか。


それから、少しずつ話すようになった。


訓練や任務の合間に隣に座って、くだらない話を振って。


最初はほとんど返事もなかったのに。

ある日、彩葉がぽつりと零した。


「……律は、どうしてここにいるの?」


その問いは純粋で、どこか怖がるようで。


「俺?んー……気づいたら、かな」


そう答えたら、彩葉は少しだけ困った顔をして。


「……そう」


また下を向いてしまう。