そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




「……音葉。ありがとう」

「うん!」


嬉しそうに頷いてから、


「これ、使って」


そう言って差し出されたのは、手に持っていたハンカチ。


「私のせいで濡れちゃったし」

「そんな、気にしなくていいのに」

「いーのいーの」


それから、音葉は少しだけ声を落として。


「……てかさ。蓮くんって、彩葉が女の子って知ってて、あの距離感なの?」

「うん。あの人、基本距離感おかしいから」

「ふぅ〜ん?」


音葉は楽しそうに言葉を続ける。


「しかも同居……なんでしょ?」

「ど、同居って言っても別に何も──…」


──本当に?

一瞬、お風呂場での記憶が頭をよぎって、言葉に詰まる。


「……ふふ」


音葉はその様子を見て、意味ありげに笑った。


「恋愛相談なら、いつでも乗るからねっ」

「そ、そんなんじゃないってば……!」


否定したはずなのに、
胸の奥がざわついて、すぐに次の言葉が出てこなかった。

……でも。

こうして誰かと、女の子として並んで話すのは、久しぶりで。

秘密を知っても、拒絶されなくて。
むしろ、受け入れてくれて。


…音葉とは、仲良くなれたらいいな。


心から、そう思った。