そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~






私は来た道を足早に戻ると、案の定。


廊下の隅で、先ほどの男子に囲まれている岬さんの姿が目に入った。


「やめてください。興味ないので」


キッと睨みつけ、はっきりと返す岬さん。

…岬さん、すごいな。

怖くないわけがないはずなのに、逃げずに言い返してる。


「えー、そんなこと言わずにさ」

「ちょっとくらいいいじゃん」


男たちは、にやにやしながら距離を詰める。

背後と左右。
逃げ道を塞ぐように、じわじわと囲い込んでいく。


「しつこいの、嫌いなんですけど!!!」


声を荒げた瞬間。

空気が、はっきりと変わった。

さっきまでの軽いノリは消え、男の一人が低い声を出す。


「は?」

「お前、可愛い顔してるからって調子乗んなよ」


……調子乗ってるのは、そっちでしょ。


胸の奥にじわっと苛立ちが広がる。

状況を見極めようと一瞬だけ踏みとどまったけど…次の瞬間、それも限界を迎えた。


一番前に立っていた男が、手に持っていたコップを強く握りしめたのが見えたから。


……あ、これ。


そう思った時には、もう遅い。

私は迷わず、岬さんの前に飛び出していた。


そして──ばしゃ、と嫌な音。


冷たい液体が、頭から一気に降りかかる感覚。

前髪から、ぽた、ぽたと水滴が落ちていく。

シャツが一瞬で濡れて肌に張り付いた。