そのキス、契約違反です。~完璧王子の裏側には要注意~




岬さんは驚いたように目を瞬かせて、それから小さく息を吐いた。


「……そっか」


一瞬だけ、寂しそうに笑う。

ごめん……!
私が男子のフリなんてしてるばっかりに…。


「……うん、でも言えてよかった!ちゃんと断ってくれてありがとう」


そう言ってくれたことに、胸の奥が少しだけ軽くなった。


「桜庭くんの、そういう正直で誠実なとこも好き」

「岬さんこそ、自分の想いをそうやってまっすぐ伝えられるの、すごいと思うよ」


……私が岬さんの立場だったら、怖がって告白なんて出来ないと思う。


「じゃあ、俺行くね。」


これ以上この場に留まるのは互いのためにならない気がして、私はそう言ってきた道を戻るように歩き出した。

…岬さんは最後まで柔らかく笑っていた。

きっと気まずくならないように、私を気遣ってくれたんだと思う。


──そのとき。


部屋の扉が見えてきたところで、廊下の向こうから男子の声が聞こえてきた。


「なぁ〜やっぱ女の子いないとつまんなくね?」

「それな。男だけじゃ盛り上がんねーわ」

「さっき、めっちゃ可愛い子いたぞ。」


思わず、足が止まる。

すれ違った途端、その男達の進行方向にはまだ岬さんがいることを思い出す。


「次見つけたら声かけてみる?」

「アリ。ナンパくらい減るもんじゃねーし」


下品な笑い声が廊下に響く。


……嫌な予感しかしない。


私は蓮の護衛だ。
本来なら余計な厄介ごとに首を突っ込むべきじゃない。

今は打ち上げの場で、しかも人も多い。
わざわざ目立つ行動を取る必要はない……頭では分かってる。

……でも。

ああいう連中に絡まれる女の子を、見て見ぬふりなんてできなかった。