それから俺たちは第一理科室を出た。
「祥、この学校で馴染み深かったり思い入れの強い場所があれば教えてほしい。まずはそういうところから手をつけよう」
「……お兄ちゃん、やっぱりなにか知ってるんでしょ」
「ふふ、なんにも知らないよ。ピエロどもが一番楽しめる塩梅で生徒たちを生き残らせるには、あるていど規則性をつけてくると思っただけ」
じっと探るようなまなざしに、手を握ることで返した。
かわいい祥は案外ぬくもりで安心してしまう。
「そういうことならまぁ、べつにいいけど…。馴染み深い場所かあ…。ベタだけど、自分のクラスは見ておきたいかも」
「うん、そうだね。俺もそこが安牌だと思う。ちょうど2年生のエリアでもあるし、探しに行こう」
柱の陰に隠れながら様子をうかがう。
学校という舞台は身を隠す場所が多く、一見すると学生側が有利に思えるが、じつは圧倒的に動きにくいのだ。
理由は一本道である長い廊下。
ずいぶんと見晴らしがいい。
すぐに鬼に発見されてしまうだろう。
かといって追われたら教室に隠れればいいわけではない。
教室に入ってしまった場合、安全に逃げ切ることなんてできないのだ。
ベランダから飛び降りるか
危険を介してベランダから隣の教室へ行くか
教室内で敵と戦いどうにか撒くか
袋小路も同然だ。
確実に助かる見込みなんてない。
しかしそうも言ってはいられない。
祥と生き残らないと。
「ぎゃあああ!」
「くるな!やめろ!」
生徒たちが廊下で逃げ惑っている。
それを追うピエロ。
祥のクラスである5組まで、どうにか混沌に紛れていけないものか。
「行こう、祥」
小さな手を引いた。



