「き、きた…」
一瞬でパニックに陥りかけた僕は、すぐ横の教室へ入った。
壁を隔てた廊下では、生徒たちの足音がバタバタと反響している。
ど、どうしよう
とっさに動いたせいで何組の教室なのか見ていなかったから、自分の現在位置が分からない。
窓は黒い遮光カーテンで覆われている。
出し物をしているわりにはロッカーしかない奇妙な空間に、ふと既視感をおぼえた。
もしかして…2年5組?僕のクラス?
たしか2年5組は多目的室を使うため、教室自体が更衣室として再利用されていたはず。
しかも、女子専用の…
「わっ、ご、ごご、ごめんなさい!」
誰もいない教室でおもわず謝罪の言葉が飛び出た。
自覚してから、男子更衣室じゃ絶対にしないような甘い匂いをじわじわと鼻腔が感じ取ってしまう。
卑しい己の鼻をつまんで出口へ向かった。
ごめんなさい僕は見てません。
何も見てませんから。
扉に手をかけようとしたその時
鼓膜を揺らすほどの悲鳴が扉越しに聞こえてきた。



