「そんなに落ち込むなよジョーカーくん。ほら、ヴィランが王子様に勝てないことなんて
世の摂理じゃねぇか?」
的外れな同情をぶらさげたイースが俺の肩に腕を回してきた。
まったく気色の悪いピエロだ。
敵なのか味方なのか、はたまた何者でもないのか。
なにひとつ読めないこいつに、橋本と似た扱いずらさを感じる。
「触るな。落ち込んでなどいない」
重たい腕を振り払い、掛け時計を見上げる。
ゲーム開始から6分弱が経過しようとしていた。
「日下部、そろそろバラけよう。10分後には鬼が放出されると言っていたからな。もう時間がない。できるだけ遠くへ逃げるんだ」
「あ、は、はいっ」
一連のやりとりを青い顔をして傍観していた日下部に声をかける。
実に心配だ。
一から十まで怯えている心許ない後輩を置いて本当に俺だけで行動してもいいのだろうか?
やはりペアになって動く手もあるが、どうにも日下部という人間がまだよく分かっていない。
グループメンバーの中じゃ一番と言っていいほど気弱ではあるが、それはそれとして唯一無傷で帰ってきたのもこいつだ。
慎重、とはまた違う、もっと薄ら寒いものを感じる。
心配3割、残りは、日下部ひとりで行動させて次こそ帰ってこられるのか試してみたいという意地の悪い思考が巡った。
そして俺はヴィランに染まってしまったのか、その思考が勝った。



