「お兄ちゃ…」
「苦しそうな顔もかわいいね…かわいい。やっぱり天使だよ。逃がすわけないじゃん」
ぎゅうううと抱きしめられ、一抹の絶望を覚える。
大好きな人は、狂っている?
「どこにも行かせないよ。祥だって、お兄ちゃんに殺されたくないだろう?」
「……」
「お兄ちゃんも殺したくない。命を失った顔も、祥ならとびきり綺麗だろうけどね」
「…目を、覚まして」
「王子様は、お姫様を守らないと」
「お兄ちゃん…」
「愛してる、愛してる愛してる。かわいくて綺麗で罪深い、俺の、俺だけの祥」
「………」
「愛してるよ。殺したいほど」
ドロリと
どこまでも甘美な囁きは仄暗い執着をたたえて私の思考を支配していく。
大好きな匂いに包まれながら、気が触れそうになるほどの愛に必死に抗った。
ぼんやりと立ち上がり、不細工なピエロを囲い込む麗しい王子を見つめる。
「祥、お手を」
大きな手のひらを握る。
もうきっと、離してなんてくれない手。
光の無い、私を映すためだけにある眼球が幸せそうに揺れて
この先起きる、悲劇なのか喜劇なのか予測のつかない未来を封じるみたく、もう一度だけ私にキスをしたのだった。



