◇Crown Act◇⇩




「橋本!」



背後から飛んできた若松先輩の呼び声に、お兄ちゃんは足を止めゆっくり振り返る。


険悪な雰囲気の王子様とジョーカーの視線がぶつかった。



「なんだい?勝手に連れて行くなって?」


「…あぁ、そうだ」


「ずいぶんと素直じゃないか。そんなに祥のそばにいたかった?」



口の端を持ち上げるお兄ちゃんに、若松先輩が拳を握り締める気配がする。



「若松もみんなも、なにを勘違いしているのか知らないけど、祥は君たちのピエロなんかじゃないから」


「黙れ」


「祥は俺だけのお姫様だよ」


「黙れ!」



青筋を立てた若松先輩が大股でこちらに歩いてくる。


私めがけて伸ばされた手が、触れる直前で叩き落とされた。


刹那、お兄ちゃんの腕の中に強く抱き込まれる。




「祥は誰にも渡さない」




絶対零度の眼光。



「奪おうとするなら、君だって殺すよ、若松」



吐き捨てた王子は、そのまま多目的室を去った。


最後に見たジョーカーの顔は


ぎょろりと目を剥いた恐ろしいものだった。


入る隙のない応酬を、私は黙って見ているしかできなかった。