車を走らせること半時間近く。
行き先はロンドンの二人のフラットとは全くの別方向で、あかねはサイド・ウィンドウから見える景色をぼんやりと眺めていた。
時々、運転席のケネスの横顔を見る。
──なにかを深く考えている時の、真剣な表情だった。あかねは余計な口は挟まず、静かに目的地へ着くのを待っていた。
しばらくした後、ケネスはある石橋の側で車を停めた。
いかにも古き良き英国という感じの石造りの橋で、川縁には長く散歩道が延びている。何組かの老夫婦がのんびり歩いていたりして、落ち着いた雰囲気だった。
「ここは……?」
車を降りながら、あかねはケネスに尋ねた。
バタンと車のドアを閉める音がして、外に出たケネスはあかねの前に進む。
「リッチモンド。子供の頃、しばらく住んでいた街なんだ。ロンドンの中央ほどうるさくないし、この川沿いの道が好きだった」
そして、「おいで」と、あかねに手を出す。
二人は少しの間、その川沿いの散歩道を無言で歩いた。そして、夕日が本当に橙色に染まり出したころ、石橋の上に登って、川の流れを見下ろした。


