その夜中、ケネスがベッドの上でふいに目を覚ますと、外はすでに静かだった。
雨は止んだのだろうか。
隣で小さく寝息を立てているあかねの額に、気付かれないような軽い口付けを残して、身体を起こす。ケネスはそのまま静かにリビングへ出た。
窓を見やると、水滴の名残がガラスに残っていたが、雨自体は本当に止んでいたらしかった。
ケネスが窓を開けると、冷えた空気が肌を撫でる。
雨は止んでいた。
雨雲も去り、夜空には星が浮かんでいる。
遥か宇宙から宝石のように輝く星たち。緑の匂いを含んだ夜風。
その時、この澄んだ空に向かって、ケネスは久しぶりに──本当に、数十年来の時を経て初めて、こんなことを思った。
(Let it rain)
雨よ、降れ。
嫌悪の対象でしかなかった雨も、これからは、あかねの笑顔と共に愛すべきものへと変わっていくのかもしれない。
遠い夜空を見上げながら、ケネスは目を細めてもう一度思った。
Let it rain.


