ハイド・パーク。
都会の端に広がるこの広大な公園に、真っ直ぐ横たわる、細い遊歩道。
……を歩きながら、あかねはなにから話せばいいのか必死に考えていた。
一歩先を行くケネスの背中は、広くて、どこかあかねを寄せ付けない。ベージュのトレンチ・コートがよく 似合っていて、グレイのマフラーが首元を飾っている。
「わ、わたし……」
あかねはなんとか声を出した。するとケネスがすぐに振り返った──まるで、この一声を待っていたように。
「『わたし……』はなんだい。仕事狂のイギリス人とはもう付き合えないって?」
「違……!」
「どれだけ心配したと思う? まだ大した土地勘もなくて迷ってるんじゃないかとか、変なのに連れ去られたんじゃないかとか……あぁ、もういい。君を放っておいた俺も悪い」
それだけ言うと、ケネスはふいっと横を向いた。
横顔……。
まだ、背を向けられないだけいいのだろうか?
しばらくふたりの間に沈黙が流れる。ケネスの方から話し出してくれそうな気配は薄かった。あかねは、硬い表情をしたケネスの横顔を見ながら、手をきゅっと握ると決心した。
「わたし、分からないんです……貴方が、本当にわたしのこと好きなのか……それともただ、同情してるだけなのか」


