Love for two, and two for love. Slowly but surely, we're learning how it works.
まるで誰かが空に色を塗ったようだ。
そんな重い灰色の空が果てなく広がる、冬のロンドン。華やかなパリとは違い、この街はどこまでも重厚だ。憂鬱な色の空も、しばらく眺めていると愛着が湧いてくる。
そんな不思議な魅力もあった。
大きな窓ガラスを前にしたカフェのカウンター席で、白い泡をたっぷりのせたカップが静かに湯気を立てている──あかねは手に余るほどの大きさのそのカップを両手に包んで、 外に広がる灰色の空をじっと見つめていた。
(まさかこんな事になるなんて、思ってなかったな……)
本当だったら今もまだ、日本で仕事に追われている身だったはずだ。
それがどうした事か、『あんなこんな』の経緯で、自分は今ロンドンの一角でカフェ・ラテをすすっている。
時々こうして一人の時間が出来ると、実はこれは全部夢で、目が覚めるとすべてが霧のように消えてなくなってしまいそうな気がして怖くなる。
しかし背後から聞こえる言葉は自分の母国語とは違って……どういう訳かそんなものが、あかねに現実を自覚させる助けとなった。


