Forgiving~英国人実業家は因習の愛に溺れる~



 ケネスがゆっくり瞳を開くと、そこには人の気配があった。

 風はほとんど無かったはずなのに、何故か傍の針葉樹がざわざわと音を立てる。空が夕暮れの色を落とし始めていて、思ったより寝てしまったらしいことだけはすぐ分かった。

 顔を、上げる。するとケネスの視界に、一人の女性が映った。
 ──夢の続きだろうか。

 そんな気がして、ゆっくり、どこか怯えたような足取りで近付いてくる彼女に、ケネスは優しく微笑んだ。あれだけ探していたのに、結局……。

「You find me」
 寝起きの少し擦れた低い声で、ケネスはそう呟いた。

 それを聞いた途端、あかねは捕らえていたものから解かれたように、勢いよく彼に駆け寄った。

 ケネスの腕が、そんな彼女を受け止める。
 強く、そして、愛おしそうに。