彼女を探そうと思っただけだ。アカネを。
それ以上のなにを望んだ訳でもない。
小さな願いではないか?
世界の王になりたいと願っている訳でも、土星の欠片を取ってきてくれと言っている訳でもない。ただ、一人の女性に会いたいと望んでいるだけだ。
こんな小さな願いくらい、神よ、叶えてくれてもよさそうなものじゃないか?
喧騒に巻かれながら、ケネスは空を仰いでそんなことを思った。
東京の街はまるで、始まりも終わりもない迷路のようだ。辺りは人だらけで、おまけに彼らはそろいも揃って、長身のケネスをじろじろと眺めてくる。
この朝、ケネスは日本に着いて、まず三島に連絡を取った。
あかねの番号は自宅も携帯も繋がらなかったからだ。
電話に出た三島は、ケネスの仕打ちを知りながらも、恨み言らしい台詞は一つも言わなかった。
ただ、話が破棄になった事だけは残念だったと言い、どちらにしてもケネスが来なければ同じ事になったのだと、落ち着いた声で語った。
そしてケネスにとっては意外だったことに、三島は、ケネスの過去を調べたようだった。キャサリーンのことを、あかねの父に代わって謝るとまで言った。
「もう過ぎたことです。こちらこそ申し訳ないことをしました。しかしミスター・ミシマ、私が今回ここに戻ってきた理由は──」
「あかね君でしょう。彼女の連絡先は知らないのですか?」
電話口でも分かる、三島のからかうような口調。
しかしケネスは構わなかった。
実際、あかねから別れてのこの数ヶ月、ケネスは身を削られるほど忙しく働いていたのだ。調べる余裕はなかった──それは、一条グループを買い取らせるために大量に買った株やその他が、ケネスの懐には少しばかり痛かったからだ。
この数ヶ月は支払いに追いつくため奔走していたと言っていい。
ここのところやっと落ち着いては来たが、今も、すぐロンドンにとんぼ返りする必要がある。
結局、
「彼女には私から連絡しておきますから。ホテルで待っていて下さい」
三島はそんなことを言って一方的に電話を切ってしまった。
ガチャリと通信が切れる音に、ケネスは汚い英語の四文字熟語を受話器に向かって怒鳴った。が、もちろんそれは誰にも届かない……そして今に至る。


