Forgiving~英国人実業家は因習の愛に溺れる~


「もちろんその後、彼女の会社は倒産だ。なんとか生活保護で食い繋いだらしいが、生活は厳しかっただろう。ケネス君は頭が良かった。奨学金で大学まで卒業したが、 今のように伸し上がるにはかなりの努力をしたはずだ」
「…………」

 あかねは、言葉を失って、頭が真っ白になっていくのを感じた。

 同時にバラバラだったパズルが、音を立てながらはまっていくような感覚もした。
 なるほど、まさにケネスがあかねにしたことは、あかねの父がケネスの母にしたことと酷似する。

(それで……? すべてはその為に……?)

 あかねは瞳に熱いものが上がってくるのを感じた。
 しかし今泣く訳にはいかない。
 話はまだ終わっていない──。

「彼女はそのあと重度のアルコール中毒に陥ったそうだ。ケネス君に暴力を振るう事も多かったらしい。しかも風の便りで君が生まれたことを知ってからは特に、彼女はもう自暴自棄になってしまった。結局ケネス君がまだ十二歳の頃に亡くなっている」

 三島はそこまで語って、深い溜息を吐いた。

「復讐と言ってしまうと楽だ。しかし、彼には彼の葛藤があったのではないかと思う。君に同じ仕打ちをすることで、過去から開放されるような気がしたのかもしれない」

 それを聞いて、あかねは目を伏せた。
 だとしたらなんだというのだろう。この事実を知ったところで、ケネスがあかねを利用し、捨てたことは変わらない。

 残酷な別れと、受け入れ切れない寂しさを残して。

 しかしその寂しさの後ろ、どこかもっと心の奥では、幸せだったころの二人の記憶がある。優しい音楽のように胸に響き、いつまでも止まない、それ。

 だからこそ苦しいのだ。だからこそ寂しい。
 ケネスは今満足しているだろうか。あかねが、キャサリーンと同じ思いをしていることで。