会社が買い取られた事で、三島をはじめとする大部分の社員たちはそちらに引き抜かれていった。失業の憂き目を見た社員たちには、売却で得た分を退職金として渡し 、あかね自身は残ることを選ばなかった。
家も高級なマンションから小さなアパートに移し、すぐに契約社員として小さな別企業で働き始めた。
英語が喋れたお陰で、同年代の女子よりは多少良い給料を受け取ったが、一人暮らしのあかねにはやっと生活できるという程度だ。
イギリスへ行くことも、考えないではなかった。
しかし今のあかねの状況では、流石に食べる物に困ることはなかったけれど、イギリス行きの旅費を工面できるほどの余裕もなく──心の準備も、まだ出来ていない。
すべての面で、あかねが今、ケネスに会いに行くことは難しかった。
そんな日々。
ケネスがあかねの元を去ってから数ヶ月が経ったある日、仕事帰りのあかねに、三島が訪ねて来た。


