Forgiving~英国人実業家は因習の愛に溺れる~


「あかねちゃん、ちょっと時間をいいかな。大事な話だ」

 次の朝、三島がいつになく緊迫した表情で社長室に現れたとき、あかねは対照的にまだ夢の中にいるような気分だった。

 三島自身がこうして訪れてくるのも珍しい。普段なら秘書の鈴木を通して、用件のみで済ます方が多いからだ。
 あかねは慌てて顔を上げて、三島に席を勧めた。

「は、はい。座ってください、三島さん」
「そうさせて貰うよ。失礼」

 三島は社長机の前の椅子に腰を下ろすと、あかねを真剣な表情で見据えた。あかねもつられて姿勢を伸ばす。
 ケネスと身体を重ねた出来事は昨日の今日で──いまだに締まらない顔をしていた自覚があったから、あかねは羞恥で頬を染めた。

 三島の真剣な瞳にすぐ状況の変化を感じ取れなかったのは、幸せに浮き足だっていたせいだ。

 あかねは昨夜、ケネスの求愛を受け入れた。

 そう、ついに二人は恋人同士と呼んでいい間柄になったのだ。
 ケネスが事前にプロポーズをしている事を考えると、まだそこまでは正式に受け入れていないにせよ、もっと深い関係だといってもいいくらいだ。
 こんな朝、幸せな気分にならない女性などこの世にそう居ないだろう。もちろんあかねも例外ではなかった。

「ケネス君と何かあったのかい?」