その紳士的な物腰。態度。深く引きこまれる瞳。
しかしそれでも、心の中まではのぞけないミステリアスさもまた、もっと彼を知りたいという欲求を芽生えさせる。
適当に歩いて大通りまで出ると、タクシーが数台停まっているのが二人の目に入った。
どちらから言い出した訳でもなく、ここまでだ、と無言で同意して、ケネスはそのうちの一つを拾った。ケネスは運転手に現金を渡し、あかねの指定する場所まで彼女を送るようにと言ってから、彼女を振り返る。
日本ではそこまでしなくてもいいのだと、伝えるべきな気もした。
しかし、ここまで紳士的な彼にそれを言ってしまうのも、逆に失礼になる気がする。
欧米ではそれがマナーだし、今は、今夜は。
ここまでは甘えさせてもらおこうとあかねは決めていた。それは、あかねがケネスの存在と求愛を受け入れ始めた証拠、でもあった。
「楽しかった。今夜はありがとう、おやすみ」
「こちらこそ……ありがとうございました、おやすみなさい」
二人は見つめ合い、しばらくして、あかねはタクシーに乗り込んだ。触れ合う事も、もちろんキスもない、素っ気無い終わり方。
ケネスは去っていくタクシーを静かに見つめていた。
あかねは自宅に戻るまでの車内で、いつにない興奮を感じていた。
きっと今夜は眠れない。そんな気分で。


