しかし、レストランは大通りから少し離れた細い道に面しており、入り口ですぐにタクシーは捕まらない。
結局、どちらにしても少し歩こうという事で意見がまとまった。
たっぷりととった食事の後、自然と身体がそれを求めている。
続く遊歩道は色とりどりのネオンに照らされていて、この時間にも多くの車両が行き来する。特に目的地があるわけでもないので、二人はゆっくりと歩を進めた。
「今夜はありがとうございました。あんな素敵なお店で、料理もとても美味しくて」
「よかった。気に入って貰えたなら嬉しい」
「融資の話も。わたし、本当になんて言ったらいいのか……」
「わたしが勝手にやったことです。それに、利益が出たらわたしもその恩恵にあずかるわけですから、礼を言われるような事ではありませんよ」
「いえ、それでも感謝します」
結局、食事前のあの告白からそれ以上、ケネスは求婚の話題について触れなかった。
今もだ。
二人の間にのぼった話題はといえば、仕事上の面白おかしい体験談だったり、音楽や絵画だったり、日本語の勉強についてだったり。
あかねも自分からは踏み込まなかった。
ただ、この頃になるとあかねは、ケネスに惹かれはじめていく自分を自覚してきていた。


