Why, I wonder, our fates were intertwined.


 一条あかねは、ビルから出ると深刻な溜息を吐いた。

 しかし、都内のビル街の喧騒は、そんなあかねの憂鬱などいちいち構っていられないとでもいうように、その溜息をいとも簡単に飲み込んでいく。
 このご時勢、自分と同じ思いをしている人間は一人や二人ではないのだろう。
 天も自分などには構っていられないというところか。

「お父さん……」

 呟いてはみたが、もちろん答えはない。
 そしてもう、この先一生、彼が自分に答えてくれることはないのだ。

 沢山の幸せな思い出と、そして最期に、あかねには抱えきれないほどの大きな借金を残して。あかねの父、一条正敏(まさとし)は先日亡くなっていた。



 会社の経営が厳しくなっているのは、世間知らずなあかねにも感じられていた。
 あまり景気の良い時勢ではないし、父の会社そのものも、一条『グループ』と名乗り一時期はそれなりの資産があったものの、結局は中堅にすぎない。
 このような中企業には、とても難しいご時勢だ。

 加えて、父の病気──あかねは、父が五十歳という年でやっと授かった初めての子供で、あかねが二十二歳になり大学を卒業した去年には、彼はすでに七十二歳。
 酒を嗜んでいたこともあり、ここ数年、腎臓を患っていた。そして先日、それが原因で急逝した。
 若くして母も亡くしているあかねは、ついに天涯孤独といわれる身分になった、というわけだ。