悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 愛奈はスマホを手に、そう答えた。

「じゃあ、よかったら私たちと一緒にいて」

 パーティー終了までの、残りわずかな時間を三人で過ごす。お喋り上手な愛奈のおかげで、会話が途切れることもなくなごやかだ。

(よかった。楓さんも私とふたりのときより楽しそうに見えるし)

 そう思った刹那、心臓がチクンとかすかに痛んだ。
 どうしてだろう? 鈍い痛みをたしかに訴えてくる胸の辺りをギュッとつかんで、志桜は考える。

(もう少し、楓さんとふたりでいたかった? ううん、そんなわけない)

 目を覚ませ!とでも言うように軽く頭を振った。

(今日は婚約破棄の正当な事由を探しに来たんだから。ちゃんと自分の人生を歩くために)

 初めて知った彼の優しい一面とか、そんなもの……深く考えなくていい。

「私、お手洗いに行ってくるね」

 近くにあった丸いテーブルにグラスを置きながら、愛奈が言った。

「うん、行ってらっしゃい」

 賑やかな愛奈がその場を離れ、静寂が訪れる。でも、楓との間に流れる沈黙は不思議と心地よい気がした。
 ふと思い出したように、楓が口を開く。

「それで、今夜の君の目的は達成できそうか?」
「も、目的?」