悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 今夜は広報部と合同の懇親会の日だ。企画部と広報部は協力して進めていく案件も多いので、情報交換を目的として時々集まるのだ。

(できたら、この企画書を最後まで仕上げてしまいたかったな)

 若干の未練を残しつつ、志桜はキリのいいところでPCの電源を落とした。

(飲み会は苦手だけど、これも仕事のうちだものね)

 人付き合いの下手な志桜にとって、飲み会は企画書の作成よりずっと難しい業務だ。

(目指すべきゴールがはっきりしている仕事と違って、世間話って正解が曖昧だから)

志桜はいつも、なにを話したらいいのか悩んでいるうちに会話に交ざる機会を逸してしまう。ノリの悪い人として、場を白けさせた苦い記憶ばかりが浮かんでくる。

(それでなくても、神室の娘ってだけでみんなに気を使わせているのに)

 その名から推測できるとおり、志桜はKAMUROの創業一族の娘だ。前社長の娘で、現社長の義理の姪。社員の目から見れば〝扱いの面倒なお嬢さま〟でしかないだろう。

(ううん、敬遠されるのは私の性格のせいね。だって似たような立場でも愛奈は……)

 誰からも好かれる同じ年のイトコの顔を思い浮かべた瞬間、当の本人が目の前に現れた。

「志桜、おつかれさま!」