悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

(まぁ、いいか。今日一日で彼も私たちは合わないと実感するはず。そうしたら〝恋人〟から〝赤の他人〟にもう一段さがるはず!)

 目的達成への道は順調に進んでいる、志桜は前向きにそう考えた。
 パーティーの序盤は楓がエスコートしてくれていたが、彼はあちらこちらの人に声をかけられ忙しそうなので、志桜は遠慮して会場の隅で待っていることにした。筋金入りの社交下手なので、一度輪を外れてしまったらもう戻れない。
 すっかり壁の花と化して、華やかなパーティーを外側からぼんやりと眺める。

(背が高いから、どこにいても目立つな)

 身長だけでなくオーラの問題もあるだろうか。楓は大勢のなかにいてもひと際目を引くので、見失う心配はなさそうだ。
 会場内を歩く彼の姿を、志桜は無意識に目で追っていた。優しげなライラック色のドレスを着た女性と楓の肩がぶつかる。そのとき、女性のほうがハンカチを落としたようだ。楓はそれを拾い、彼女に声をかけている。

(あの女性のドレス、メイホリックのスタッフさんが最初にオススメしてくれたやつかしら?)

 今季のイチオシとオススメされたが、自分には絶対似合わないと確信した一着だ。

(うん。やっぱり彼女のような色白で華奢な女性が着てこそのドレスよね。すごく素敵)