悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 新規ビジネスの開拓とそのための資金を欲していた志桜の家と、旧家の名とコネクションを必要としていた楓の家の利害が一致したため、自分たちの婚約は成立した。 

(おかげでKAMUROは息を吹き返せたのだから、鷹井家には頭があがらないけれど)

 この婚約との交換条件として、鷹井家はKAMUROの新ビジネス、Kマシェリの立ちあげに全面協力してくれたのだ。国内最大手のECショッピングサイトであるTbuyとの業務提携は心強いものだったし、資金的にもかなり援助をしてもらったと聞いている。
 利害の一致といっても、先方より神室家の得た利益のほうがずっと大きかったはず。

(私は……彼になにかを要求したり、意見したりできる立場じゃない)

 彼のほうが五つも年上という理由だけではなく、婚約の経緯からしても自分たちの関係の主導権を握ってしかるべきなのは楓だ。

(だけど、このビジネスがうまくいきさえすれば!)

 対等な関係を得られるかもしれない。そう思うと彼へのプレゼンにも自然と熱が入る。

「日本橋の本店が大切にしている、お客さまに寄り添う接客サービスをオンライン販売にも取り入れられないかな?とずっと思っていたんです」
「なるほど。それでAIの活用を考えたわけか」