悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 愛奈の本性があきらかになり、会社の人たちが「そういえばあのときも、例の件も……」と志桜の悪評はすべて彼女が仕組んだことだったと答え合わせをしたからだった。

「ワイン事件のふたりもメッセージをくれましたよ」

 愛奈の取り巻きで、志桜の同級生でもあるハルカとユリ。志桜は高校の頃からふたりに嫌われていたけど、それにも理由があった。愛奈がふたりに、志桜がハルカとユリの家は成金だとバカにしていたと吹き込んでいたらしいのだ。
 今回の噂を聞いて、ふたりは高校時代のそれも愛奈の嘘だったのでは?と疑って連絡をくれた。志桜がそんな発言はしていないと説明すると、きちんと謝罪をしてくれた。
 だが、楓は決して納得はしていない顔だ。

「……今さらだな」
「ふふ、結城さんも同じこと言ってました」

 蘭も『今さら謝ったって遅い!』と怒ってくれた。

「でも、謝るのって勇気がいりますよね。そこを乗り越えてくれた気持ち、私は嬉しかったです」

 愛奈は結局、一度たりとも謝罪をしてくれなかった。だから余計にだ。

「君はお人好しだな。まぁ……五年も君をほったらかしていたどうしよもない男を受け入れてくれた時点で、すでに証明されているか」

 楓はクスリと自虐的に笑う。