悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

「そもそも、この写真にはなにか裏があるだろう?」

 ほんの一瞬だが、愛奈がぎくりとしたのが見て取れた。氷点下の眼差しで、楓は彼女を見据える。

「――覚悟しておけ。志桜の心を傷つけた罪は軽くない」

 きっと明確に裏切られる寸前まで、志桜は彼女を信じようとしていただろう。

(どれだけ傷ついているか……)

 ズタボロに引き裂かれた彼女の心を思うと、楓の胸も痛む。
 愛奈の本性に気づかず騙され続けた志桜は愚かだったかもしれない。だが楓は、彼女のその弱さも愛おしいと、守ってやりたいと思った。
 その信念を貫く覚悟はできているから、目の前のこの女に情けをかけてやる気はない。どんな手を使ってでも、愛奈を志桜の世界から排除する。
 殺気にも似た楓の圧を感じ取ったのだろう。
 愛奈はヒュッと喉の奥で息をのみ、飛び跳ねるようにして立ちあがった。荷物をまとめ、逃げるように部屋を出ていく愛奈の背に楓は声をかける。

「ひとつ忠告しておくと、君が思っているほど世の中は無能な人間ばかりじゃない。君の浅はかさを見抜く人間などいくらでもいるよ」

 愛奈は振り返らずそのまま部屋を出た。バタンッと騒がしい音を立てて、扉が閉ざされた。

 ◇ ◇ ◇