悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 その台詞に忍ばせた侮蔑を、愛奈も感じ取ってくれたらしい。彼女はその白い頬にカッと朱を注いだ。

(こんなに腹が立ったのは生まれて初めてかもしれない)

 やはり志桜が絡むと、感情の制御ができなくなるようだ。自分でも驚くほどの怒りが楓の腹の奥に渦巻いている。
 愛奈をさらに挑発するように楓は言いつのる。

「あいにく、俺は自分でもどうかと思うほどに志桜に惚れ込んでいてね」

 楓は志桜と金髪の男のベッド写真をつまみあげ、まじまじと見つめた。それからふっと苦笑を漏らす。

「たとえこの写真が真実で、志桜がこの男を愛していたとしても……手放す気なんかさらさらない。一生懸けてでも、俺に振り向かせれば済む話だ」

 ワナワナと、愛奈は屈辱に肩を震わせた。

「……どうしてよ? 志桜より私のほうがずっとかわいいでしょう? 守ってあげたくなるでしょう? 今まで出会った男はみんなそう言ったわ」

 類は友を呼ぶという諺はある意味で真実なのだろう。浅はかな女には、見る目のない軽薄な男が寄ってくる。ただそれだけのことだ。だが、彼女にそれを教えてやる義理は自分にはない。

「ほかの男は知らないが、俺が人生を懸けて守りたいと思うのは志桜だけだ」

 楓は写真を持つ手をくるりと返して、愛奈の眼前に突きつけた。