悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 愛奈はふるふると首を横にふり、上目遣いにじっと楓を見つめる。
 意味ありげな間を置いてから、彼女は口を開いた。

「KAMUROの社長令嬢として、楓さんのお耳に入れなければいけないお話があります」

 彼女は足元に置いてある自分のバッグから資料らしきものを取り出し、楓の前に並べる。
ネットニュースの画面を印刷してきたもののようだ。

「今日の夕方に出たニュースなのですが、ご存知ですか?」

 楓が資料を持ちあげ、記事の内容を目で追う。

「六本木の飲食店の摘発?」

 繁華街にあるバーが違法薬物の売買拠点になっているとして警察に摘発されたらしい。常連客には有名なモデルやインフルエンサーなども多く、彼らの薬物使用を疑う声もあがっている。といった内容の記事で、その有名なモデルとインフルエンサーの写真も掲載されているが、楓には知らない顔だった。

「いえ、知りませんでしたね」

 言い方は悪いが、都内では数か月に一度は起きていそうな出来事。さして騒ぎ立てるような事件とも思えなかった。

「この店がなにか?」
「……はい。実は今、うちの社内は大騒ぎになっています」
「KAMUROと付き合いのある店だったのですか?」

 だとすれば、それは意外だなと思って楓は眉根を寄せた。