悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

「Kマシェリ専用のAIを開発するにあたって、ブランドの創設秘話なども情報としてインプットさせたいんです。この辺りの話は神室さんより、社長令嬢である萩田さんのほうが詳しいのでは?と思いまして」

 たった今考えた、でまかせだ。けれど言い訳としては自然だろう。なにより、志桜ではなく自分が選ばれたという優越感で愛奈はご満悦のようだ。ペラペラと喋ってくれる。

「Kマシェリはパパが必死に考えた企画です! 志桜のお父さんが投資で大失敗した損失を残したまま亡くなって……会社が倒産危機におちいって……それをどうにかするために必死に形にしたそうです」
「前社長が亡くなったあとに……では、ずいぶんと短い期間で形にしたわけですね」
「はい。そのスピード感が成功の秘訣だったと、いつも自慢げに話してます」

(……なるほどな)

 欲しかった情報を無事に得て、楓の頬は無意識に緩んだ。

「えっと、こんな話でよかったですか?」
「とても参考になりました。ありがとうございます」

 自分の話はこれで十分なので、今度は彼女に話題を振る。突然の来訪の理由に、心当たりはなにもない。

「萩田さんのお話は? Kマシェリのプロジェクトになにかありましたか?」

 その可能性はあまり高くないだろうと思いつつも、一応聞いてみる。