悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

「神室さん。今日は早く帰ったほうがいいかもです。嫌な思いをする前に」

 彼女の発言の意味は志桜にも理解できた。自分たちと同じようにこのニュースを知った周囲の同僚がざわつきはじめているから。

「クスリかぁ」
「一緒に使ってたりして? ほら、あのベッドでの写真のときとか」

 コソコソと話される内容が聞こえてきて、志桜は顔をこわばらせる。
 自分にかけられた疑惑は〝婚約者がいる身で男遊びをしていた〟に〝違法薬物の使用〟まで加えられてしまったらしい。
 派手な異性関係だって褒められたものではないが、犯罪行為となれば話は変わってくる。潔白を証明できなければ、仕事を続けるのも難しい状況になるかもしれない。
 志桜のこめかみから冷たい汗が流れる。

「私、家まで付き添いましょうか?」

 親身になってくれる蘭にこれ以上心配をかけないよう、志桜はどうにか笑顔らしきものをつくった。

「ううん、大丈夫。結城さんの言うとおり、今日はもう帰るね」
「気をつけて」

 企画部を出たあとも、すれ違う会社の人がみな、軽蔑に満ちた視線を送ってくる。