悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 どうやら友人というのは、本当だったらしい。彼の電話はナズナと繋がった模様だ。
 電話を切ると、彼はパッと志桜を振り返った。

「約束、来週だってさ!」
「――え?」
「いかにも仕事できそうな雰囲気なのに、案外抜けてるんだ。俺、そういうギャップのある子って大好き」

 彼が急にグイッと距離を縮めてきた。

「暇になっちゃったみたいだし、俺と遊ぶ? このバーね、狭く見えるけど実は裏がVIP限定の個室になってるんだ。ベッドもあって、ゆっくりできるし」
「け、結構です!」

 ジリジリと迫ってくる彼を志桜は両手で押し返す。

「ちょっとゴウ!」

 そこに、女性の怒った声が飛んでくる。

「今夜は私と遊んでくれる約束でしょ。ほかの女を口説き出すってどういうことよ?」

 いつの間にか近くに来ていた彼の連れの女性が、志桜を牽制するように彼にしなだれかかる。

「ごめん、ごめん。冗談だって」
「もう~。じゃあ……キスしてくれたら許してあげよっかな」
「了解」

 彼の腕が彼女に腰に回る。人前にもかかわらず、ふたりは激しいキスを交わしはじめた。

「お、お会計をお願いします」

 志桜は慌てて長髪の男性スタッフに声をかけて、カードを差し出す。

「――どうも。ありがとうございました」