悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 彼もインフルエンサーなのだろうか。たしかに目鼻立ちが整っていて、一般人とは異なるオーラをまとっているような気もした。首筋にタトゥーが入っているし、少なくとも会社員ではなさそうだ。

「そうなんですね」
「君はナズナの友だち……ではないよね? こういう店に来るタイプにも見えないし」

 クスクスと笑われてしまった。

「彼女と仕事の話をするために、約束していたのですが」
「あぁ、なるほど。けどナズナは最近この店には来ないよ。『名前が売れてきたから、チャラチャラしたイメージつけたくないの』って言ってた」
「え、でも……」
「仕事関係者と、この店で会うとは思えないけどなぁ」

 そう言われると、そのとおりな気がしてきた。そもそも騒がしすぎて、話をするには向かない場所だ。

(愛奈が店を勘違いしたのかしら?)

「電話してあげよっか。君の名前は?」

 金髪の彼が言う。怖そうな外見に似合わず、意外と親切な人だ。ここは好意に甘えることにしよう。

「助かります。KAMUROの者だと言えば、伝わるかと」

 彼はすぐさま、志桜の背を向けてスマホを操作しはじめる。

「ナズナ? 俺、俺! 今さ、六本木で~そうそう、お前と約束してるって女の子が」