悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

(ナズナさんと契約できるかどうかはプロジェクトの成否に関わる問題だもの。私の仕事でもあるわ)

 店は六本木の繁華街の一角にあるらしい。歩き慣れないエリアなので道に迷わないか、心配だったがショップカードの地図を頼りに無事にたどり着いた。
 クラブと呼ぶのだろうか。耳が痛くなるほどの音量で、志桜にはなじみのない洋楽が流れている。黒とゴールドを基調にした店内は六本木らしい高級感はあるものの、やや軽薄な雰囲気で、出入りしている客も派手な感じだ。
 ビジネスの会合で利用するような店ではないが、相手は会社員ではなくインフルエンサーだ。この店と付き合いがあるのかもしれない。

(二階はバーになっているみたいだし、静かに話ができるのかしら?)

 愛奈の指定は二階だったので、志桜はよくわからないダンスを踊る男女の人混みをかき分けて、奥にあるエレベーターに乗った。
 バーのほうは、下階よりは落ち着いた雰囲気で志桜は胸を撫でおろした。席はカウンターのみであまり広くはない。女性のふたり連れ、それから奥の席にカップルらしき男女、スタッフはバーテンらしい長髪の男性がひとり。カップルの男性のほうは常連客らしく、スタッフと親しげに笑い合っていた。金髪の華やかな雰囲気の人だ。

(私、ものすごく場違いだな)