悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 愛奈が故意に意地悪をしている。ただの被害妄想かもしれないし、事実だとしても志桜にもなにか落ち度があったのかもしれない。

(それを確かめるためにも彼女と話をしよう)

「私もテニス部の仲間と大喧嘩して、その後にもっと仲良くなった経験ありますよ!」

 蘭自身は多分、愛奈が好きではないのだろう。それなのに、彼女は志桜と愛奈の仲がうまくいくよう願ってくれている。なんだかじ~んとしてしまった。

「結城さんって、いい子だよね」
「え~、まぁよく言われますけど! 私も神室さん、好きですよ。クールビューティーなのに中身は意外とかわいくて。ギャップ萌え?みたいな!」

 人生で一度も接したことのなかったタイプ。だけど、同僚よりもう少し親しくなれたらいいなと志桜は思った。

 その日の終業後。
 愛奈と話がしたくて、帰り際に広報部をチラリとのぞいてみたけれど彼女は不在だった。

(電話をしてみようかな)

 そんなことを考えながら本社ビルを出たところで、聞き覚えのある声が耳に届いた。

「えぇ、倒れたって本当に?」

 愛奈の声だ。エントランス脇の植え込みの辺りで足を止め、彼女は誰かと電話をしているようだ。

(倒れた……なにかあったのかしら?)

 電話を終えても呆然としている様子の彼女に志桜は声をかける。