「わかる気がするよ。俺も子どもの頃、母にまったく同じ感情を抱いていたから」
志桜は弾かれたように顔をあげ彼を見る。楓は切なげにほほ笑む。
「客観的に見たらどうしようもない母親だとわかっていたんだ。けど、時折見せる優しい顔はたしかに現実だったから……作ってくれたカレーはうまかったし、頭を撫でてくれる日もあった」
楓の言葉は泣きたくなるほど優しく、志桜の胸に響いた。
「そこにすがって、ほかの面には目も耳を塞いでしまう。あの人と暮らしていた頃の俺はそうやって心を保っていた」
「私もそうだったのかもしれません」
「きっと、彼女にも俺の母にも優しい一面はある。それは否定しなくていいと思う。ただ、人間には色んな顔がある。一面だけ見ていても、その人を理解するのは難しい」
「そのとおりですね」
自分に都合のいい、信じたい愛奈しか見ていなかった。結局、自分は愛奈という人間を理解しようとしていなかった。はたして、それを友情と呼べるのだろうか。
「俺の場合は、母のほうから手を放されて強制的に呪いが解けた。でも志桜は……」
彼の言葉を引き取り、志桜は言う。
「自分で動かないとダメですよね」
楓は軽くうなずき、続けた。
志桜は弾かれたように顔をあげ彼を見る。楓は切なげにほほ笑む。
「客観的に見たらどうしようもない母親だとわかっていたんだ。けど、時折見せる優しい顔はたしかに現実だったから……作ってくれたカレーはうまかったし、頭を撫でてくれる日もあった」
楓の言葉は泣きたくなるほど優しく、志桜の胸に響いた。
「そこにすがって、ほかの面には目も耳を塞いでしまう。あの人と暮らしていた頃の俺はそうやって心を保っていた」
「私もそうだったのかもしれません」
「きっと、彼女にも俺の母にも優しい一面はある。それは否定しなくていいと思う。ただ、人間には色んな顔がある。一面だけ見ていても、その人を理解するのは難しい」
「そのとおりですね」
自分に都合のいい、信じたい愛奈しか見ていなかった。結局、自分は愛奈という人間を理解しようとしていなかった。はたして、それを友情と呼べるのだろうか。
「俺の場合は、母のほうから手を放されて強制的に呪いが解けた。でも志桜は……」
彼の言葉を引き取り、志桜は言う。
「自分で動かないとダメですよね」
楓は軽くうなずき、続けた。



