悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

「浮かれたくなる言葉だが、元気がなかった理由がほかにあると思うとそれはそれで心配だな」

 志桜の表情がぴくりとこわばる。自分がこのところ元気がない理由は、今も愛奈と蘭との関係がどこかギクシャクしているからだ。
 その発端となった打ち合わせには楓と雄大も同席していた。心配してくれている彼に嘘はつきたくなかったので、志桜は正直に打ち明ける。

「私は昔から人付き合いが苦手で、がんばってもうまくいかなくて。いつの間にか……人間関係の構築を諦めてしまいました」

 学生時代も女の子グループのなかでうまく立ち回れず、社会人になって環境が変わってもそれは同じ。改善したいと口では言っていても、心のなかではどうせ無理だと決めつけていた。

「どう振る舞っても誤解されてしまうし、会社ではとくに、父のおかした罪もあるので」

 無茶な投資の失敗という志桜の父の罪について、楓はなにも聞き返してこなかった。おそらく、縁談が持ちあがった時点で英輔から事情を聞いていたのだろう。

「身に覚えのない悪評を立てられても、反論して波風立てて余計に嫌われるくらいならと、黙ってのみ込んで……だけど」

 志桜は顔をあげて、まっすぐに楓を見つめた。