悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 彼女の言葉を思いきり遮ってしまった。やけに鋭い声だったせいか、蘭が驚いたように目をパチパチと瞬いた。

「私たちは子どもの頃からの付き合いなの。愛奈はいつも私を助けてくれて……だからっ」

 まるで自分に言い聞かせるように、必死で言葉を重ねる。
 蘭は困ったように眉尻と口角をさげた。

「余計なお世話だったのなら、すみません。でも、私は好きになれないです。ああいう人」

 スパッとそう言い捨てて、蘭は志桜より先に自分のデスクに戻っていった。
 志桜も席に座ってキーボードを叩きはじめたけれど、あきらかにいつもより集中力を欠いている。

(私は……愛奈に嫌われているのかな?)

 さっき感情的になったのは、蘭の指摘に自分も思うところがあったからだろう。
 志桜がずっと愛奈に助けられてきたのは事実。学生時代も会社に入ってからも、孤立しがちな志桜に優しくしてくれたのは彼女だけだったから。
 だけど最近、とくに楓が現れてからの愛奈の行動には疑問を抱く瞬間も多かった。たとえばメイホリックのパーティーのときのワイン事件。

(あえて考えないようにしてたけど……あのとき愛奈の指が私のグラスを引っかけたような気がしたのよね)

 そして先ほどの会議。