悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

「その、たいしたものではありませんが、これまでいただいたプレゼントのお礼といいますか……」
「俺に?」

 予想もしていなかったと言いたげに、彼は目を丸くする。志桜は小さくうなずき、早口に続ける。

「楓さんが朝のコーヒーがオススメだと教えてくれたから。私はいつも、午後の疲れてきたタイミングに紅茶とドライフルーツで休憩するんです」

 紅茶の香りとフルーツの甘さにホッとして、もうひとがんばりしようと気合いが入る。自分には大切で大好きな時間だ。

「楓さんがそうしてくれたように、私も自分の好きなものを……」

 彼が自分の大切なものを贈ってくれたこと、あれはすごく響いた。彼との未来はまだ不確かだけど、この気持ちだけは伝えておきたいと思った。

「これまでの誕生日プレゼント、ありがとうございました。実は毎年……なにが届くのかちょっと楽しみにしていたんです」

 志桜はいたずらっぽく唇を緩ませる。

「そうか」

 返事は短いものだったけれど、楓は心から嬉しそうにほほ笑んだ。
 その笑顔に、志桜の胸の奥底で凍りついていたものが溶け出し、あふれていくのを感じた。それはきっと……恋心と呼ばれるものだ。