悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 レンタカーも立派な高級車で、乗り心地は快適だった。今日はとても天気がよく、日差しがまぶしい。きっと運転しにくかったのだろう。交差点で停車したタイミングで、彼はドアポケットからサングラスを取り出す。

「……似合わないのは自覚してるから笑わないでくれよ」

 志桜は別になにも言っていないのに、照れた顔でこちらをチラリと見る。それから彼はスッとサングラスをかけた。

(こんなふうに、ちょっとかわいい一面を見せるのはずるい)

 憎めない、振りきれなくなってしまいそうだ。

「そんなこと、思ったりしませんよ」

 というよりも、真っ黒ではなく濃いブラウンの大人っぽいサングラスがお世辞抜きによく似合っていた。

(鼻筋が綺麗な人は眼鏡が似合うと聞くものね)

「君もまぶしいだろう?」

 そう言って、楓は助手席のサンバイザーをおろしてくれる。その瞬間、志桜は横顔ではなく正面から彼のサングラス姿を見た。

(――ん? なんだろう。今、デジャヴみたいなものが)

 パッと回路が繋がったような感覚があった。過去の記憶と目の前の彼がぴたりと重なる。

「楓さん、ひとつ質問してもいいでしょうか」

 低く迫力のある声が出た。

「半年くらい前、日本にいらしてませんでしたか?」