悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 今年はジュエリーを贈ろう、そう思った理由は単純だ。先日、パールのブローチを渡したら母はとても喜んでくれた。
『美しい宝石を嫌いな女性はいない』という、世の男性が当たり前に理解している真実を楓は初めて学んだ。それからもうひとつ。これまでは、志桜の趣味や好みなどなにひとつ知らなかったが、今は違う。

(宝石は、間違いなく好きなはず)

 あんなにもキラキラした瞳でその魅力を語っていたのだから。

 雄大がピックアップしてくれた店のホームページを眺めて、どこがいいか検討する。
日本にも店舗があるメジャーブランドではつまらないし、KAMUROとは違った魅力のある店がいいだろう。

 その週末、楓はサンノゼの北にあるナパという街の宝飾店に出向いた。アートギャラリーのような雰囲気で、宝石が美術品のように飾られている。志桜のアドバイスに従って、インスピレーションで選ぶのにはぴったりの店だ。
 アレキサンドライトと呼ばれるその石は、一瞬で楓の心をつかまえた。軽く眺めていただけなのに、数多くの宝石のなかから浮かびあがってアピールしてくるように思えた。
 チェーンと台座はオーソドックスなプラチナ。滴のような形をした宝石は、青にも緑にも見える不思議な色合いで、見つめていたら吸い込まれてしまいそうに魅惑的だ。