悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

「まぁ、そのようなものです。宝飾品には知識も興味もないので――」

 言ってしまってから、ハッと慌てて口元を押さえる。知識はともかく、興味がないは無礼な発言だった。完全に言葉選びを誤った。

「すみません」

 楓が謝罪を口にすると、志桜は笑みを浮かべてゆっくりと首を横に振った。

「お気になさらないでください。むしろ、興味を持っていただけるチャンスなので嬉しく思います!」

 澄み渡る空のような爽やかな笑顔に……グッと心をつかまれた気がした。彼女に接客してもらったら、自分にも宝飾品の魅力が理解できるようになるかもしらない。そんなふうに考えて、レクシャーを受けてみることにした。

「有名なダイヤモンドの4Cなど、宝石を選ぶ基準は様々ありますが。私個人はもっとシンプルでいいのでは?と思います」
「シンプル?」

 こくりと彼女はうなずく。

「宝石はひとつとして同じものはありません。だから出会いは一期一会。もし、一目で心をつかまれるような宝石に会えたら、それはきっと運命かと」

(一目で心をつかまれる……)

 一瞬前の自分の心境を見透かされたようで妙な気分だ。もっとも自分と志桜は初対面ではないけれど。

「なるほど。インスピレーションが大事なのか」