悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

 雄大の言うとおりにしたほうがよい結果が望めると理解はしている。プレゼント選びだって彼に任せたほうが、きっと志桜も嬉しいだろう。楓の得意な合理的判断ってやつだ。

(わかっているのに、どうして……)

 結局、四度巡ってきた彼女の誕生日はすべて楓のセンスでプレゼントを贈った。雄大からは『ズレすぎている』と呆れられたが。
 女性への贈りもののセンスは皆無だったけれど、ビジネスセンスのほうは悪くなかったのだろう。鷹井AIラボは順調し成長し、父や兄たちから『鷹井グループの中核事業』と認められるまでになった。
 あの日誓ったとおり、婚約破棄を切り出す態勢が整ったのだ。

 彼女の二十五回目の誕生日の半年ほど前。季節は冬。
 出張で久しぶりに日本に帰る機会を得た。

(彼女と話をするのに、ちょうどいいタイミングかもしれないな)

 両家に切り出す前に志桜本人に説明はすべきだろう。そんなふうに考えた。

(ホテルに戻ったら、連絡を取ってみるか)

 日本橋にあるクライアントのオフィスを出た楓は、ホテルに戻るために駅へと向かっていた。日本の都心部は車より電車のほうが便利だ。車社会のカリフォルニアにすっかりなじんでいたから、街を歩く行為がなんだか新鮮に感じられた。