悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない

「パズルは脳のリセットにいい。ストレスや悩みを抱えたときの気分転換に最適だ。コーヒーの香りは朝のやる気を引き出してくれる。どちらも俺の生活に欠かせないもので、だから……君の役にも立つんじゃないかと思ったんだが」

 ふと言葉を止め、彼はスンと沈んだ表情になる。

「君が紅茶派なのは想定外だった。茶葉の詰め合わせにすればよかったな。ロンドンには出張でよく行くのに」

 志桜は言葉もなく彼を見つめ返していた。

(私になんか興味なくて、あのプレゼントは義務感だけで……そう思い込んでいたけど、違ったの?)

 電話もメールもなく、交流らしきものは年に一度のプレゼントだけ。白状すると『プレゼントくらいでごまかされたりしないんだから!』と意固地になっていた面があった。
 その年に一度だけの贈りものには、ちゃんと楓の気持ちが込められていたのだ。志桜が感じ取ろうともしていなかっただけで。
 個性的なプレゼントの数々を楓自身が選んでくれていたと知ると、志桜の胸に色々な感情がドッと押し寄せた。どうせ秘書任せだろうと決めつけていた自分のひねくれっぷりを申し訳なく思うし、お礼の手紙をもっと丁寧に書けばよかったという後悔。それから――。
 純粋にとても嬉しかった。
 頬が無意識に緩んでしまって、満開の笑顔になる。